介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分けて取れます。介護休業給付金は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算しますが、計算のもとになる賃金月額には上限があり、1支給対象期間あたりの給付は366,222円で頭打ちになります。そして2025年4月から、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、事業主は制度の内容・申出先・給付金のことを個別に周知し、利用の意向を確認する義務を負っています。
会社に申し出れば、制度の説明と意向確認が返ってくる
育児・介護休業法は令和6年法律第42号で改正され、介護に関する部分は2025年4月1日に施行されました。労働者が家族の介護に直面した旨を申し出たとき、事業主は個別に周知と意向確認を行わなければならない、という定めです。周知する事項は3つで、介護休業と介護両立支援制度等の内容、その申出先(人事部など)、そして介護休業給付金に関することです。方法は面談・書面交付・FAX・電子メール等のいずれかで、FAXと電子メールは労働者が希望した場合のみとされています。
資料には「取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません」とも書かれています。申し出た側が調べて交渉する構図ではなく、説明する側に義務が置かれている。ここが順序を決めます。親のお金の把握のように自分で集めるしかない情報とは違って、制度の中身と申請先は先に会社へ聞けば出てくる情報です。
もうひとつ、介護に直面する前の早い段階での情報提供も義務になっています。対象は40歳に達する日の属する年度の1年間、または40歳の誕生日から1年間のいずれか。40歳は介護保険の被保険者になる年齢でもあるため、まだ何も起きていない時期に会社から資料が届くことがあります。
使える制度は休業だけではない
辞めるかどうかを考える前に、法律が最低基準として置いている制度を並べておきます。介護休業だけを見て「93日では足りない」と判断すると、日々の働き方を変える側の制度を取りこぼします。
| 制度 | 使える量 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日・3回まで分割 | 介護の体制を構築するための休業という位置づけ。賃金の支払義務はない |
| 介護休暇 | 年5日(対象家族が2人以上なら年10日)・1日または時間単位 | 通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせ向け。勤続6か月未満を労使協定で除外する仕組みは廃止 |
| 所定外労働の免除 | 介護終了まで何回でも請求可能 | 請求すれば残業そのものが免除される |
| 時間外労働の制限 | 月24時間・年150時間を超える時間外労働を制限 | 上の免除とは別の制度で、こちらは上限を設ける形 |
| 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの就業を制限 | 介護終了まで何回でも請求可能 |
| 短時間勤務等の措置 | 利用開始から3年以上の期間内で2回以上 | 短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の援助措置のうち事業主が講じたもの |
| テレワーク | — | 選択できるようにすることは努力義務。義務ではない |
93日という長さは、自分で介護をやり抜くための期間としては短い。ただし介護休業の目的は、介護サービスの手続きを含めて体制を組み立てることだと資料が説明しています。要介護認定の申請から結果までは原則30日以内と法が定めていて、その待ち時間もこの93日の中に収まる設計です。認定を待つ間にサービスを使えるかどうかは介護保険法27条8項の遡及効の側で決まります。
実際の利用率は低いままです。令和4年就業構造基本調査では、介護をしている雇用者322万人のうち介護休業等制度を使っていた人は11.6%で、介護休業に限ると1.6%(5万1千人)。介護休暇が4.5%、短時間勤務が2.3%です。一方、介護・看護を理由に離職した人への調査では、職場の取組として「仕事と介護の両立支援制度に関する個別の周知」があれば続けられたと答えた人が55.1%でした。周知の義務化はこの数字を背景に置かれています。
67%が満額で出るのは賃金月額546,600円まで
介護休業給付金は雇用保険の給付で、支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。賃金日額は原則として介護休業開始前6か月間の総支給額(賞与を除く)を180で割った額、支給日数は原則30日。ここに上限と下限があります。賃金日額に30を掛けた賃金月額が546,600円を超える場合は546,600円で計算するため、1支給対象期間あたりの給付は366,222円が上限です。逆に賃金月額が96,090円を下回る場合は96,090円として計算されます。この金額は毎年8月1日に見直され、現在の値は2027年7月31日までのものです。
賃金が高い人ほど67%という率から離れます。厚生労働省のQ&Aが示す概算では、休業前6か月の平均が月15万円程度なら支給額は月10万円程度、20万円程度なら13.4万円程度、30万円程度なら20.1万円程度。「賃金の67%が必ず出る」という言い方はこの上限の存在を落としています。
休業中に会社から賃金が出ている場合の扱いも決まっています。賃金が「賃金日額×支給日数」の13%以下なら67%相当額がそのまま出ますが、13%を超えて80%未満だと賃金月額の80%相当額との差額に減り、80%以上なら支給されません。就業日の数にも条件があり、1支給単位期間に働いた日が10日を超えると、その期間は支給対象から外れます。なお給付金そのものは課税の対象になりません。
退職を決めてから取ると給付は出ない
介護休業給付は職場復帰を前提とした給付です。介護休業の当初からすでに退職を予定しているなら支給対象になりません。支給単位期間の途中で離職した場合も、その期間は支給を受けられません。休業を辞めるまでの助走に使う、という組み立ては制度の側で塞がれています。
やり直しがきかない部分もあります。同じ対象家族については、93日分を受け取ったあとに要介護状態が変わっても、再度の支給は受けられません。つまずくのは「3回まで」を回数の枠と読む場合で、分けられるのは93日という日数の枠の内側だけです。
受給要件は、介護休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あること。契約期間の定めがある働き方の場合はこれに加えて、休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約の満了が明らかでないことが要ります。自分が要件を満たすかどうかの判定は、事業主が出す休業開始時賃金月額証明書をもとにハローワークが行うため、事前に断定できる部分ではありません。
確かめる順は勤務先、ハローワーク、地域包括支援センター
最初に動かすのは勤務先です。介護に直面した旨を申し出れば、制度の内容と申出先と給付金について説明を受け、意向を確認される。ここで自社の就業規則が法定を上回っているかも分かります。給付金の支給申請は原則として事業主を経由して行い、本人が希望すれば自分で手続きすることもできます。申請期限は、一回の介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日です。
全部を一度に確かめなくても構いません。金額の見込みは在職中の事業所を管轄するハローワークで、介護サービスの側は市区町村の地域包括支援センターで、それぞれ別の窓口が答えます。離れて暮らしていて日々の様子が分からない段階なら、制度の手前で見守りの4類型を先に見ておくほうが具体的に話せます。判断能力の低下が視野に入っているなら成年後見制度の2026年改正が別のレイヤーの話になります。
| 本文の記述 | 原典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 93日・3回、受給要件、支給額の算式と概算、就業日10日、非課税、職場復帰前提 | 厚生労働省「Q&A〜介護休業給付〜」 | 2026-09-05 |
| 個別周知・意向確認の義務と施行日、40歳等への情報提供、介護休暇・所定外労働の免除ほかの制度、利用率と離職者調査 | 厚生労働省「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」 | 2026-09-05 |
| 賃金月額の上限546,600円・給付の上限366,222円・下限96,090円、賃金が支払われた場合の減額、申請期限 | ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」(PL080801保06) | 2026-09-05 |
当サイトは一般的な制度の説明のみを行い、個別の可否や金額の判断は行いません。支給の要件と金額は事業所を管轄するハローワークと勤務先の担当窓口、介護サービスの利用は市区町村の地域包括支援センターにご確認ください。