要介護認定の申請中でも、介護サービスの利用そのものは止められていません。介護保険法第27条第8項が「要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる」と定めているためで、認定が下りた後の給付は申請日まで戻ります。ただし戻るのは効力だけで、非該当だった場合と、認定された区分の限度額を超えた場合の扱いは別に決まっています。条文は2026年8月27日に確認しています。
条文が定めているのは「さかのぼる」ことだけ
介護保険法第27条第8項の全文は次のとおりです。
要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる。
要支援認定についても同じ構造で、第32条第7項が「要支援認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる」と定めています。条文が置いているのはこの効力の起算点だけで、申請中に何をしてよいかを書いた条文はありません。
実務でよく使われる「暫定ケアプラン」という言い方も、法律の側の言葉ではありません。介護保険法の条文に「暫定」の語は1か所も出てきません。介護保険法施行規則に1か所ありますが、それは附則第2条の2「要介護認定等に関する暫定措置」で、制度が始まった当時の調査担当者の範囲を定めた別の規定です。つまり暫定ケアプランは、第27条第8項の遡及効という条文上の構造を前提に、結果が出る前からサービスを組み立てる運用側の呼び名として読めます。
申請してからの日数について条文が置いている定め
待つ期間の側にも定めがあります。第27条第11項と第12項が処分の期限を置いていて、内容は次のとおりです。
| 条項 | 原文が定めていること | 読み取れること |
|---|---|---|
| 第27条第11項 本文 | 申請に対する処分は、申請のあった日から30日以内にしなければならない | 結果を待つ期間の原則は30日 |
| 第27条第11項 ただし書 | 心身の状況の調査に日時を要する等の特別な理由がある場合は、30日以内に処理見込期間とその理由を通知して延期できる | 延びること自体は想定されている。ただし通知が要る |
| 第27条第12項 | 30日以内に処分がされないとき、ただし書の通知がないとき、または処理見込期間が経過した日までに処分がされないときは、申請を却下したものとみなすことができる | みなすかどうかは被保険者の側が選べる形になっている |
延期の通知が来ないまま30日を過ぎているなら、それ自体が条文の定めと合っていない状態です。この場合に却下とみなすかどうかは本人が決められる書き方になっていますが、実際にどう扱うかは市区町村の窓口に確認してください。
結果が出たときに分かれるところ
遡及するのは効力であって、給付の範囲まで無条件に戻るわけではありません。分岐は2つあります。
1つは非該当の場合です。第27条第9項は、市町村が要介護者に該当しないと認めたときは理由を付して通知すると定めています。認定されなければ遡及する効力そのものが生じないので、申請中に使ったサービスの費用は保険給付の対象になりません。
もう1つは限度額です。第43条第1項は、居宅サービス等区分ごとの給付費の合計額について「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額を基礎として、厚生労働省令で定めるところにより算定した額の百分の九十に相当する額を超えることができない」と定めています。限度基準額は要介護状態区分に応じて厚生労働大臣が定めるものなので、想定より軽い区分で認定されると、超えた部分は給付の外に出ます。申請中に組んだ利用量が、結果として出た区分の限度に収まるかどうかは、認定が出るまで確定しません。
この2つは、条文を読む限りどちらも「起こりうる」としか書けない部分です。実際にどの程度の幅で見ておけばよいかは、担当のケアマネジャーが持っている区分ごとの限度額の表と、組もうとしている利用量を突き合わせないと分かりません。
いま急ぐ必要があるかの整理
急ぐ理由があるとすれば、それは制度の期限ではなく本人の状態の側です。第27条第8項の遡及効は申請日を起点にするので、申請を早く出すこと自体には意味があります。一方で、申請を出したその日にサービスを組み始めなければならない理由は条文のどこにもありません。
逆に、急いで組まないほうがよい条件もあります。認定が非該当になる可能性が読めない段階では、費用が全額自己負担になったときに払える範囲に利用量をとどめる判断がありえます。福祉用具の貸与のように月額が小さいものと、通所や短期入所のように積み上がるものでは、外れたときの金額が違います。
手続きと費用の話が同時に来るので、先に整理しておくと動きやすくなるのは親の側の情報です。どの口座から何が引き落とされているか、介護費用を誰の財布から出すのかは、認定を待つ間にも進められます。親のお金の把握はどこから始めるかに集める項目をまとめています。判断能力の低下が視野に入っている場合は、後見の制度がどう変わるかを成年後見制度はこう変わるで確認できます。介護保険の外側で日々の様子を把握する手段としては親の見守りサービスは4類型で選ぶが対応します。
申請の窓口と、認定が出るまでの具体的な進め方は市区町村の介護保険担当課と地域包括支援センターが扱います。条文の読み方で迷う部分は、そこで確認するのが早いです。
条文は e-Gov 法令検索の介護保険法(平成9年法律第123号)および同法施行規則(平成11年厚生省令第36号)で2026年8月27日に確認しました。