特別養護老人ホームへの新規入所は、平成27(2015)年4月1日以降、原則として要介護3以上に限られています。要介護1・2の方は、居宅で日常生活を営むことが困難なやむを得ない事由がある場合に「特例入所」が認められる建て付けです。複数の施設に申し込んでよいかについて、国の通知に定めはありません。入所の判定は施設ごとの委員会が行い、判断の基準は自治体と関係団体が共同で作る指針によります(2026-09-15確認)。
何が決まったのか
根拠は、厚生労働省老健局高齢者支援課長が平成26年12月12日に出した「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(老高発1212第1号)です。通知はまず、介護保険法第8条第21項の改正と介護保険法施行規則の改正により「平成27年4月1日以降の施設への入所が原則要介護3以上の方に限定される」と述べています。
そのうえで、「居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があることによる要介護1又は2の方の特例的な施設への入所」を特例入所と呼び、これが認められるとしています。運用については「透明性及び公平性が求められるとともに、特例入所の運用については、市町村による適切な関与が求められる」と書かれています。
注意したいのは、この通知が判断の基準そのものを国が全国一律に決めたものではない、という点です。通知は「関係自治体と関係団体が協議し、施設への入所に関する具体的な指針を共同で作成することが適当である」とし、その作成にあたっての留意事項を示す形をとっています。通知自身も「地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として発出するもの」と位置づけを明記しています。読み手の側から見ると、実際に自分の親に当てはまる基準は、住んでいる地域の指針を見ないと確定しない設計だと読めます。
中身の整理
通知が要介護度によって何を分けているのかを、条項と対応させて並べます。「規定なし」の行は、通知にその定めが見当たらないという意味です。
| 論点 | 要介護3〜5 | 要介護1・2(特例入所) | 通知の該当箇所 |
|---|---|---|---|
| 入所判定の対象 | 対象 | やむを得ない事由があると認められる場合に対象 | 別紙2. |
| 申込書の記載 | 規定なし | 施設が要件を具体的に記載して説明し、申込者側が該当についての考えを記載する | 別紙2.(2)① |
| 申込みの受付 | 規定なし | 該当する旨の申立てがある場合、受け付けない取扱いは認めない | 別紙2.(2)② |
| 市町村の関与 | 規定なし | 施設は保険者市町村に報告し、適宜その意見を求める | 別紙2.(2)③ |
| 入所の決定 | 施設に置く入所に関する検討のための委員会の合議による | 別紙4.(1)① | |
| 複数施設への申込み | 規定なし | 該当箇所なし | |
特例入所にあたって考慮するとされている事情は4つ挙げられています。認知症により日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること。知的障害・精神障害等を伴い同様の状態にあること。家族等による深刻な虐待が疑われること等により心身の安全・安心の確保が困難であること。単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること。通知はこれに続けて「地域の実情等を踏まえ、各自治体において必要と認める事情があれば、それも考慮すること」とも書いています。4つで閉じた一覧ではない、という読み方になります。
入所の必要性の高さを判断する基準については、「介護の必要の程度」は要介護度を、「家族の状況」は単身世帯か否か、同居家族が高齢又は病弱か否かなどを勘案することが考えられる、とされています。申込みの順番や、申し込んだ施設の数を勘案するという記述は見当たりません。制度の外側でできる備え、たとえば同居家族の状況や在宅での暮らしぶりを記録として残しておくことは、見守りサービスの類型を整理した記事で扱っている領域とつながります。
当サイトは一般的な制度の説明のみを行い、個別の税務・法務の判断は行いません。実際のお手続きは、専門家および各窓口にご確認ください。
いつから
通知の発出日は平成26年12月12日で、対象となるのは「平成27年4月1日以降の施設への入所」です。西暦に直すと2014年12月12日の通知で、2015年4月1日以降の入所に適用されます。2026年9月15日時点で、この通知が廃止されたり後継の通知に置き換えられたりした記載は確認していません。なお、この通知の施行に伴い、平成14年8月9日付け老計第0807004号の旧通知は廃止されています。
一方で、自治体と関係団体が共同で作成する指針には、作成期限や改定周期の定めが通知に書かれていません。つまり、自分の地域の指針がいつ版を変えたかは、通知の日付からは計算できません。指針については「公表するとともに、施設は、入所希望者に対してその内容を説明するものとすること」とされているので、確かめる先は公表されている指針と、申し込もうとしている施設そのものになります。要介護認定の結果が出るまでの時間の扱いは別の定めによるので、認定を待つ間にサービスが使えるかを条文で整理した記事のほうが近い論点です。
いま動く必要があるか
複数の施設に申し込むこと自体を止める規定は、この通知にはありません。入所の決定は施設ごとに置かれた委員会の合議によるとされているため、判断する主体が施設ごとに分かれている構造です。ただし、通知が挙げる勘案事項は介護の必要の程度と家族の状況であって、申込みの件数ではありません。手当たり次第に数を増やすことが有利に働くと読める記述は、通知の中には見当たりませんでした。
急ぐ理由が薄いケースもあります。要介護3以上で、在宅での生活が現に続けられている場合、入所判定は定員に空きが出たときに勘案事項に照らして行われるので、申込みを早めることそのものが順位を動かす仕組みにはなっていません。逆に要介護1・2の場合は、申込書に特例入所の要件への該当についての考えを記載する欄が設けられているはずなので、どの事情に当てはまると考えるのかを整理してから申し込むほうが、書類が戻ってくる手間は減ります。該当する旨の申立てがあれば申込みを受け付けない取扱いは認められていない、という定めも確認しておくと、窓口でのやりとりの見通しが立ちます。
確かめる先は3つです。住んでいる自治体と関係団体が作成した入所指針。申し込もうとしている施設が入所希望者に説明する指針の内容。そして担当のケアマネジャーが把握している地域の在宅サービスの提供体制です。市町村は施設に対して意見を表明できるとされており、その判断材料に「担当の介護支援専門員からの居宅における生活の困難度の聴取の内容」が挙げられています。親の暮らしの実情がどう伝わるかは、記録として何が残っているかに左右されます。制度の手続きに入る前の情報整理は親のお金と情報の把握から始める記事にまとめています。個別の該当可否は自治体の介護保険担当窓口か地域包括支援センターにご確認ください。