後見開始の申立てについて、裁判所が公表している標準的な申立添付書類のうち戸籍に関するものは「本人の戸籍謄本(全部事項証明書)(発行から3か月以内のもの)」の1点です。推定相続人や親族全員分の戸籍は、この一覧には挙がっていません。ただし同じページに「審理のために必要な場合は、追加書類の提出をお願いすることがあります」とも書かれているので、一覧が上限という読み方はできません。

標準の添付書類に載っている戸籍は本人の1点だけ

裁判所のウェブサイトは、後見開始の手続について申立人・申立先・費用・必要書類を項目ごとに公表しています。必要書類は「申立書」と「標準的な申立添付書類」に分かれていて、後者に並んでいるのは本人の戸籍謄本、本人の住民票または戸籍附票、成年後見人候補者の住民票または戸籍附票、本人の診断書、本人情報シート写し、本人の健康状態に関する資料、本人の成年被後見人等の登記がされていないことの証明書、本人の財産に関する資料、本人の収支に関する資料です。

戸籍が出てくるのは1行目だけで、そこに書かれているのは本人の分です。候補者については住民票または戸籍附票が挙がっており、戸籍謄本ではありません。「同じ書類は1通で足ります」という注記も同じ場所にあります。

一方で、申立人になれるのは本人・配偶者・四親等内の親族・未成年後見人・未成年後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人・検察官と定められていて、戸籍の請求資格より範囲が広くなっています。ここが噛み合わないことが、集める範囲の迷いにつながります。

標準の添付書類を、戸籍が要る/要らないで並べ直す

書類 誰の分か 戸籍が要るか 期限の定め
戸籍謄本(全部事項証明書) 本人 要る 発行から3か月以内
住民票または戸籍附票 本人 戸籍附票を選べば戸籍側、住民票なら不要 発行から3か月以内
住民票または戸籍附票 成年後見人候補者 同上 発行から3か月以内
診断書・本人情報シート写し 本人 要らない 診断書は発行から3か月以内
登記されていないことの証明書 本人 要らない(法務局で取得) 発行から3か月以内
財産・収支に関する資料 本人 要らない 規定なし
親族全員の戸籍 標準の一覧に記載なし

表の最終行は「無い」ことを書いた行です。親族の同意書や親族関係図を求める運用の話は各地の家庭裁判所の案内に出てきますが、最高裁が公表しているこの一覧には載っていません。申立先の家庭裁判所が個別の手続案内を出しているかどうかで、実際に用意する量は変わります。公表資料には35の家庭裁判所が個別の手続案内を持つと書かれているので、まず申立先がその中に入っているかを見ることになります。

当サイトは一般的な制度の説明のみを行い、個別の税務・法務の判断は行いません。実際のお手続きは、専門家および各窓口にご確認ください。

その戸籍を自分で取れるか

戸籍法10条1項は、戸籍に記載されている者(除かれた者を含む)またはその配偶者、直系尊属もしくは直系卑属が、戸籍謄本等の交付を請求できると定めています。親の戸籍を子が取る場合はこの直系卑属に当たるので、続柄を示す資料と本人確認書類があれば窓口で完結します。

当てはまらないのは、兄弟姉妹やおい・めいが申立人になる場合です。四親等内の親族なので申立てはできますが、10条1項の「配偶者、直系尊属若しくは直系卑属」には入りません。この場合は10条の2第1項が受け皿になり、同項2号は「国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合」を挙げています。家庭裁判所へ提出するための請求はここで読める設計です。請求の際には、提出先の機関と提出を必要とする理由を明らかにすることが条文上求められています。

専門家に依頼した場合の請求の可否は、資格ごとに条文が分かれています。10条の2第3項は受任している事件・事務のための請求、第4項は資格ごとに列挙された代理業務のための請求で、どちらも要件の書き方が違います。どの様式で請求できるかは、依頼した業務の中身によって変わります。依頼を検討しているなら、見積りの段階で「戸籍はどちらが取るのか」を先に確かめておくと、二重に取り寄せる無駄が出ません。

いま動く必要があるか

急ぐ理由が無いケースのほうが多いと考えられます。戸籍謄本には「発行から3か月以内」という期限が付いているので、申立ての時期が固まっていない段階で先に取ると、出す頃には期限が切れて取り直しになります。診断書と登記されていないことの証明書も同じ3か月なので、そろえる順序としては、本人の診断書の見通しが立ってから戸籍を取るほうが無駄が出にくくなります。

先に動く価値があるのは、期限の付かないものです。本人の財産に関する資料と収支に関する資料には、公表資料上の有効期限がありません。預貯金の口座、不動産、負債、年金や施設利用料といった項目は、集めるのに時間がかかるうえ、後見の申立てをしない結論になっても手元に残ります。この順序の考え方は親のお金の把握はどこから始めるかで扱っています。

制度そのものをどう選ぶかは別の論点で、任意後見と法定後見の違いは条文と2026年改正の位置づけで整理しています。後見の申立てまでは至らない段階で、離れて暮らす親の様子を把握したいという話であれば、制度の外側の手当てとして見守りサービスの4類型が対応します。手続そのものの相談先は、申立先の家庭裁判所の手続案内、法務局、市区町村の地域包括支援センターです。

裁判所ウェブサイト「後見開始」の「5. 申立てに必要な書類」(2026年9月1日確認)。個別の家庭裁判所が独自の手続案内を出している場合があり、そこで別の書面を求められることがあります。戸籍の請求資格は戸籍法10条および10条の2によります。