任意後見と法定後見は、選ぶ時期が違います。任意後見は本人の判断能力があるうちに公正証書で契約する制度で、法定後見は判断能力が不十分になってから家庭裁判所に申し立てる制度です。2026年6月24日に公布された改正で法定後見の3類型は補助へ一元化されますが、任意後見の契約方式そのものは条文上の骨格が残ります(2026年8月25日確認)。

何が決まったのか

成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」は2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。法務省の公表によれば、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、本人にとって必要な範囲でその利用を可能とする内容です。改正の全体像と施行の3段階は成年後見制度はこう変わる。2026年改正の内容と施行時期を原典で整理にまとめました。

この記事で扱うのは、その手前にある選択です。条文と公表資料を条件を揃えて突き合わせて検証しました。任意後見と法定後見は同じ「後見」という語を使いますが、根拠となる法律も、動き出すタイミングも別です。任意後見は「任意後見契約に関する法律」(平成11年法律第150号)に、法定後見は民法にそれぞれ定めがあります。e-Gov法令検索で条文を取得すると、任意後見契約法は2026年6月24日公布・同日施行の改正を反映した版が最新でした。

二つの制度は入口が違う

論点 任意後見 法定後見 根拠
始めるタイミング 本人の判断能力があるうちに契約しておく 判断能力が不十分になってから申し立てる 条文あり
誰が支援者を決めるか 本人が任意後見人となる方やその権限を自分で決める 家庭裁判所が個々の事案に応じて成年後見人等を選任し、権限も基本的に法律で定められている 法務省Q&A
契約の方式 法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない 契約ではなく家庭裁判所への申立て 任意後見契約法3条
効力が生じる時点 家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から 審判の確定によって開始する 任意後見契約法2条1号・4条1項
申立てができる人 本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者(本人以外の申立てには本人の同意が必要) 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など 任意後見契約法4条1項・法務省Q&A
2026年改正の影響 契約の方式と効力発生の骨格は条文に残っている 後見・保佐を廃止して補助に一元化 施行日は政令待ち
確認日: 2026-08-25 出典:e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」(改正反映版・2026年6月24日施行)および法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」。施行の時期や最終的な内容は変わる可能性があります。確定した時点で本文と確認日を更新します。

当サイトは一般的な制度の説明のみを行い、個別の税務・法務の判断は行いません。実際のお手続きは、専門家および各窓口にご確認ください。

条文の言い回しをそのまま引くと、任意後見契約は「委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるもの」と定義されています(任意後見契約法2条1号)。契約を結んだ時点では効力が生じない、という構造がここに書かれています。

効力が生じるのは、同法4条1項が定める監督人の選任の時です。条文は「任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する」と書き、ただし書で本人が未成年者であるときなどを除いています。つまり任意後見は「契約しておいて、必要になったら家庭裁判所を通して起動する」二段構えの制度です。

法定後見の側について、法務省の成年後見制度Q&Aは、家庭裁判所が個々の事案に応じて成年後見人等を選任し、その権限も基本的に法律で定められていると説明しています。任意後見については、本人が任意後見人となる方やその権限を自分で決めることができるとされています。誰に、どこまで任せるかを本人が決められるかどうかが、公表資料から読める最大の違いです。

いつから

法定後見の一元化は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。公布日が2026年6月24日なので、上限は2028年12月24日です。実際の施行日は今後の政令で確定するため、この日付は法律上の上限を機械的に計算したものにすぎません。

任意後見契約法の側は、e-Gov上の最新版が2026年6月24日公布・同日施行の改正を反映しています。ただし、この改正が任意後見の実務にどう波及するかは、法定後見の一元化が施行された後の運用と合わせて見る必要があります。現時点で条文から読み取れるのは、公正証書による方式と、監督人選任による効力発生という骨格が維持されている、というところまでです。それ以上のことは、本記事の確認時点では分かりません。

いま動く必要があるか

急ぐ理由がある家庭と、ない家庭があります。急ぐ理由があるのは、任意後見を選びたい場合だけです。任意後見は本人が契約する制度なので、判断能力が下がってからでは結べません。ここが任意後見の使えない条件で、この一点だけが時間の制約を持ちます。逆に言えば、本人が契約できない状態になっていれば任意後見は選択肢に入らず、法定後見しか残りません。

逆に、法定後見を使うことになりそうな場合は急ぐ必要がありません。申立ては判断能力が不十分になってから行うものですし、制度そのものが2028年12月までに一元化される方向で確定しています。いま慌てて現行の類型で申し立てるより、施行後の姿を見てから決められる余地が広がった、というのが今回の改正の読み方です。

どちらを選ぶにしても、先にできるのは情報の側です。親の口座と保険がどこにあるかは、制度と無関係にいつでも整理を始められますし、任意後見契約を作るときにも法定後見を申し立てるときにも同じ情報が要ります。順番は親のお金の把握はどこから始めるか。相続の前に集める情報チェックリストにまとめました。判断能力の話とは別に、日々の安否を見る仕組みが要るなら見守りカメラとセンサーはどちらが続くかが入口になります。

当サイトは弁護士・司法書士・税理士等の有資格者による監修を受けていません。制度の解釈や個別の適否についての助言は行わず、公表資料と条文から読み取れる範囲を、確認した日付とともに並べるところまでを書いています。実際にどちらの制度を使うかは、家庭裁判所・法務局・公証役場の窓口や、各分野の専門家にご確認ください。

条文はe-Gov法令検索、制度の説明は法務省の公表資料で2026年8月25日時点の内容を確認しました。