通帳の残高は、親の家計の一部しか映しません。世帯主が65歳以上の無職世帯では、貯蓄2494万円のうち普通預金にあたる通貨性預貯金は766万円。割合にして30.7%です。残りは定期預金と有価証券と保険に分かれて置かれています。通帳を見て少ないと感じたときに次にやることは、貯める話でも節約の話でもなく、通帳の外にある置き場を一つずつ当たることです。
平均を基準にすると、たいていの家は「少ない」側に入る
世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高は、平均2564万円です。同じ集団の貯蓄保有世帯の中央値は1777万円で、787万円の開きがあります。分布を見ると2500万円以上が36.3%、300万円未満が14.9%、あいだの300万円以上2500万円未満が48.9%。上の階級が長く伸びている形なので、平均は真ん中の家庭より高いところに出ます。
二人以上の世帯全体でも、平均2059万円を下回る世帯が66.1%を占めます。平均と比べて少なかったという感想は、それ自体では家計の異常を意味しません。比べる相手を平均に置いた時点で、三分の二の家庭が下回る設計になっています。
通帳に映らない置き場は、定期・有価証券・保険の三つ
世帯主が65歳以上の無職世帯の内訳では、定期性預貯金が778万円、有価証券が510万円、生命保険などが426万円を占めます。定期預金は同じ銀行に預けていても証書や別冊の通帳になっていることが多く、普通預金の記帳からは確認できない置き方です。有価証券は証券会社から取引報告書と特定口座年間取引報告書が届くので、郵便物の差出人を見れば口座の所在は分かります。保険は年に一度「契約内容のお知らせ」が保険会社から送られます。
保険だけは性質が違います。請求しなければ支払われないのが保険の基本構造なので、家族が存在を知らない契約は、無いのと同じ結果になります。証券の保管場所より先に、どの会社と契約があるかを控えるほうが効きます。
収入の側は年金から確かめます。ねんきん定期便は毎年誕生月に届き、50歳以上には「老齢年金の種類と見込額」が、50歳未満には「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されます。35歳・45歳・59歳はハガキではなく封書です。すでに受給が始まっている親なら定期便は届きませんが、年金額改定通知書と振込通知書が同じ役目を果たします。振込先の口座が普通預金なら、その通帳の入金欄が年金の実額です。
帰省1回で埋まる分だけ確かめる
| ✓ | 確認すること | 手がかりになるもの |
|---|---|---|
| 定期預金や積立が別の証書になっていないか聞いた | 証書・別冊の通帳 | |
| 証券会社との取引があるか見た | 取引報告書・年間取引報告書 | |
| 保険会社名を控えた(証券の場所は後でよい) | 契約内容のお知らせ | |
| 年金の受給額を見た | ねんきん定期便・年金額改定通知書 | |
| 不動産の持ち分と評価額を見た | 固定資産税の納税通知書 | |
| 住宅ローンや保証の有無を聞いた | 返済予定表・引き落としの記録 |
※ 暗証番号とネットバンキングのIDやパスワードは、このシートの対象外です。
不動産は毎年4月から6月ごろに市区町村から届く固定資産税の納税通知書で、所在と評価額の両方が分かります。分野そのものを広く取るなら親のお金の把握に6分野の一覧があります。共有名義になっている土地や、遠方に相続で受け継いだ持ち分が載っていることがあるので、親自身が把握していない行が出てくる分野です。負債は返済予定表と、通帳の引き落とし欄を並べて見るのが早い方法になります。
後から探すと、条件と費用が付く
親に聞けなくなってからでも、保険契約を探す道は残っています。生命保険協会の生命保険契約照会制度は、会員会社にある契約の有無を照会できる仕組みで、親族が死亡した場合と、認知判断能力が低下した場合と、災害救助法が適用された災害時に使えます。
ただし条件が二つ付きます。認知判断能力の低下を理由に使うときは医師による診断が必要で、利用料はWEB申請6000円・書面申請7000円が1名につきかかります。分かるのは契約の有無までで、保障の内容も受取人も照会できない仕組みです。元気なうちに会社名を控えておけば無料で済むところが、条件付きの手続きに変わる——「親が元気なうちに」の実体は、危機を煽る話ではなく、この差のことです。手が届かなくなる時期そのものの話は親の口座はいつ凍結されるのかにまとめました。
相続税の心配は、たいてい二番目に来る
相続税には基礎控除があり、課税の対象になるのは遺産の総額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合です。相続人が2人なら4200万円が線になります。65歳以上の世帯で2500万円以上を持つ層が三分の一を超えるとはいえ、基礎控除が見るのは世帯の貯蓄ではなく被相続人の遺産の総額で、不動産の評価や生命保険金の非課税枠も入ってきます。
超えるかどうかの見当をつけるにも、結局は置き場の一覧が要ります。金額の心配より先に所在の把握という順番は、ここでも変わりません。個別の税額や適否の判断は税理士に、遺産分割の設計は弁護士・司法書士にご確認ください。
全部を一度にやらなくてよい
この話題は正面から切り出すと止まります。通りやすいのは自分側の事務を入口にする形で、「保険を見直していて、そういえば家の火災保険はどこの会社だったかと思って」くらいの距離から入ると、通帳の話をしなくても置き場の話ができます。上の表は6行ありますが、帰省1回で1行埋まれば十分な速度です。
置き場の一覧とは別に、離れて暮らしていて日々の様子が分からない段階の手当ては見守りサービスの4類型が引き受けます。通帳の残高が動いているかどうかは、そちらの道具のほうが早く分かります。
当サイトは有資格者の監修を受けていません。制度の解釈や個別の適否には踏み込まず、公表資料から読み取れる範囲と、それを確かめた日付を並べるところまでを書いています。金額と取扱いは金融機関・保険会社・市区町村ごとに違うため、実際の手続きは各窓口でご確認ください。
貯蓄の金額・構成比・階級別分布は総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」(2026年5月19日公表)によります。ねんきん定期便の送付時期と記載内容は日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」(2026年4月1日更新)。生命保険契約照会制度の対象と利用料は生命保険協会の案内。相続税の基礎控除は国税庁タックスアンサーNo.4152(令和8年4月1日現在法令等)。いずれも2026年9月10日に確認しました。